今年6月に長嶋茂雄さんが永眠され、厳かな葬儀が執り行われましたね。その時の喪主が次女の三奈さんだったので「あれ? 一茂さんは?」と私は思いました。どうやら親子の間では様々なことがあったようです。ハウスメーカーのCMみたいな円満な家庭の方が珍しいのかも。特に男同士の親子間ってそんな仲良くない方が多くないですか? 今日選んだここの家族も、血縁というだけでは計り切れない複雑な思いを抱えていたようです・・・というわけで本日ご紹介するのは、ジュリアン・レノンの『ヴァロッテ』です!
名前でお分かりのように、そうジュリアン・レノンはあのジョン・レノンの長男です。元々訳ありな家庭で育ったジョンが当時の恋人・シンシアの妊娠を知り「けじめ婚」の形で始まった結婚生活。期せずして23歳で子持ちとなったジョンには、幸せな家庭の父親像が上手く想像できなかったようです。あまり愛情を注ぐこともなくジュリアン5歳の時に離婚が決まり親権はシンシアへ。その後も数えるほどしか父・ジョンとは会ったことが無かったジュリアン。後に知る父の再婚、腹違いの弟の誕生、幸福な一家のニュース・・・自分の中で「父」という存在を渇望しつつ憎悪する、そんな難しい思春期を送ったのではないでしょうか。父の死去から4年後の1984年、彼は音楽活動をスタート。この『ヴァロッテ』とはジュリアンらが作曲活動のために滞在したフランスの古城のことだそう。一見恋模様のもつれ、とも取れる歌詞ですが、実はこれ、父・ジョンへの痛々しいラヴコールなのではないかと言われています。メロディも切な過ぎる・・・。
「僕にはとても買えないような その家の玄関先に腰掛けていると そこにあなたを感じることが出来る
その理由は 思うにそんな難しい話じゃない あなたが僕を見失おうとも 僕はあなたを愛してる
僕らの愛ってどう説明すればいいんだろう? まるで手袋よりもぴったりくるんだ」
「川べりの石に座ってギターを弾いている いつかは僕らも上手くやっていけるのかなって
何かが間違ってるってあなたも思わない? 僕は前からずっとそう感じてた」
余りに濃い血縁なのに、余りに薄い関係性。皮肉なことに、その悲しいすれ違いを歌うジュリアンの声が、もう・・・最初ラジオから流れてきた時「ん? ジョン・レノンてまだ未発表の曲あったんだー」ってマジで思ってましたもん(笑)。メロディーラインもですが、目つぶって聴いたらどっちがどっちか分からん!電話の声とか激似でこっちが間違えちゃう親子っていますよね。彼らは顔も結構似てますが、まるで生前のジョンが甦ったようで、そこがまた涙を誘う曲です。この曲を収録したアルバムもヒットし、1986年のグラミー新人賞にノミネートされています。日本ではホンダ・シティのCM曲に起用され本人も出演しました。結局のところジョンが生きている内に関係修復とはいかなかったようですが、救いは腹違いの弟・ショーンとは交流が深い事と、寂しい思いをしている幼少のジュリアンを元気づけようとポール・マッカートニーが作った曲が『ヘイ・ジュード』だということ!やっぱいい人だよポール!人を想う気持ちって優れた楽曲を生み出すんだなぁ~、Check It Out!
ヴァロッテ [ ジュリアン・レノン ]







