東大も注目!科学進歩は人類の幸福を叶えるか?洗練されたシニカルなAOR『ドナルド・フェイゲン/アイ・ジー・ワイ(Donald Fagen/I.G.Y.)』

本日1月10日は、ドナルド・フェイゲンの78回目のバースデイ!AOR全盛期の80年代、私はまだ子供だったので、アーティスト達が醸し出すこの大人な雰囲気・都会のイメージにもう胸キュンでした・・・。今回ご紹介するこの曲のカッコ良さにも、レコードジャケットの洗練されたデザインにも憧れたものです。男の人の煙草吸う姿ってカッコいい!と本気で思ってましたもん、今じゃわずかなニオイでも敬遠してますが・・・ガキんちょでしたね!というわけで本日ご紹介するのは、ドナルド・フェイゲンの『アイ・ジー・ワイ』です!

ドナルド・フェイゲンは米ニュージャージー州出身のシンガーソングライター。ロック・バンド「スティーリー・ダン」のフロントマンとしての方が有名でしょうかね。ジャジーでクールなポップ・ロックで70年代を席巻したバンドでしたが80年代に入って活動が停滞、ドナルドもソロ活動へと舵を切ります。初のソロ・アルバムとなった『ナイトフライ』に収録されているのが今回ご紹介する『アイ・ジー・ワイ』。何の略・・・?と常々思ってましたが、1957~1958年にかけて環境変化などに関わる地球の物理的調査が国際規模で行われました。その期間及び研究プロジェクトは「国際地球観測年(International Geophysical Year)」と呼ばれ、その頭文字が『アイ・ジー・ワイ』というわけです。歌詞の内容も、科学技術の発展を祝しながらもその実、いずれ人間という存在はあって無いようなものになる、という懸念や諦めが垣間見えます。「海底を走る列車でニューヨークからパリまで90分」とか「宇宙へ行くための切符を手に入れるんだ」とか、実現しそうな未来都市の偶像が語られたかと思えば「慈悲とビジョンを持った者たちがプログラミングした1台のマシンが大きな決断を下す」「そいつが任務を遂行した時 我々はクリーンだ 永遠に自由に 永遠に若くいられる」は、ちょっと怖くないですか!?なんか『銀河鉄道999』や『トータル・リコール』を想起させます・・・結局、ヒトは機械に乗っ取られるってことを言いたいの? 最近、AIの活用についても問題視されるニュースが増えてきました。国際地球観測年は1950年代、この曲のリリースは1982年ですが、40年以上前に近未来を憂う曲が作られ、現実がその内容通りにまっしぐら・・・なところが怖すぎます!

こーんな社会派な内容をクールなAORに仕上げ、しかも「なんて美しい世界がやって来るんだろう」と自嘲気味にさらりと歌っちゃう。食えない男だな~ドナルド・フェイゲンってお人は。この曲を、東京大学の藤井総長が令和4年度卒業式祝辞で引用しています。一部をご紹介すると・・・

「たとえ世界がどんなに大変な状況にあったとしても、決して未来への希望を失わないでほしいと思います。そして諦めないで、これからも学び続けていただきたいと思います。世界中の誰もが先ほど触れたようなセンスを磨いていけば、前に紹介した私が好きな歌に込められていた「皮肉」を乗り越え、実感とともに

“What a beautiful world this will be
  What a glorious time to be free”

と歌えるでしょう。この歌詞がみなさんの声で、素直に歌われる日が来ることを願っています」

藤井総長はやはりこの曲を、科学技術の躍進に対する皮肉と取ったようです。ドナルド的には本当のところはどうだったんでしょう。この曲が収録された『ナイトフライ』というアルバムはその録音技術にも注目が集まり、デジタル音源の初期作品として音響関係の人々からも評価が高い作品のようです。ドナルド自身、アーティストとして技術革新の恩恵を受けつつ、それでもロボットには絶対に作れない、人の琴線に触れる音楽を生み続けたいと思っているのでは。癌で他界したスティーリー・ダンのメンバーであるウォルター・ベッカーの分もまだまだ長生きして活躍して欲しいです、Check It Out!


ナイトフライ [ ドナルド・フェイゲン ]
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